びぶりおてか

私家版 Caffè Biblioteca

敦煌到着 2018/8/1

北京発6:40で敦煌へ。

北京は深夜になっても湿度も気温も高く、かなり厳しい状況。また、到着してから喉の不調を漏らす人も私を含めて何人か。
大気は本当に汚れているというのが実感出来る。
住んでる人にはあまりに気の毒な環境であった。

上昇する飛行機の窓から空気の層が見られた。
下は黒に近い灰色、その上はきれいな青空。信じがたいもの。

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街中を過ぎれば、美しい山水画の景色。こんな大自然がすぐそばにあるのに。
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眼下はだんだん高原の景色へ変わっていく。

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モンゴルの高原地帯上空に来たところで機内食の朝食。
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これまたラップで包まれた手作り感満載のツナサンド。カップケーキ、シロップ漬けの果物はジュースの様に飲んでから食べているので真似して。手作りサンドイッチにも怖じずに完食したことをご報告申し上げます。
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あえて、添加物などの表示は見ないことにする。
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徐々にゴビ砂漠の景色が眼下に続いてくる。たまたま窓側席だった団長が、砂漠が初めてなら、窓側に行きなさいと、席を替わってくれたので、食事の時以外はいつもの様に窓にへばりつく3時間の旅。
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オアシスや緑がどんどん少なくなり、ついに大きな波紋を見せる砂の大地に。涙出た。
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甘粛省上空へ。
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飛行機が着陸し、窓から「敦煌」の文字を見た時はさすがに目頭が熱くなる。
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エントランスホール前にはすぐチェックインカウンターというコンパクトさ。でも建物は全く新しい。
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今回の大きな目的の一つはこれ。
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曇りだけどひんやりして気持ちのいい気候
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オアシスのイメージなのか、花壇には開花している花木が色とりどりで、確かにオアシスにたどり着いた感のある演出。素人なもので。
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北京首都国際空港〜トランジット1泊

この先乗ることもないかと思うので、写真撮っておいた。

羽田国際空港発 エアチャイナ(CA)

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最近はパスポートだけで予約していた便にチェックインできるんすね。
ところがマシンの読み取り機に翳しても「予約無し」とでる。
出発サポートのツアー会社の人が来ていたので、聞くと、

「あれ?なんで日本語の表示?CAは中国語のみのはずだけど。。。
あ゛。。。チャイナエアラインは台湾の航空会社です。乗るのはエアチャイナ。。。」

紛らわしい。

 

3時間50分の空路。

北京首都国際空港着は現地時間16:45 第3ターミナル だったかな。

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世界の代表的ハブ空港は大きい!! しかもなにしろセキュリティーは厳しい。
顔認証画像と指紋を一致させ撮られ、入国審査の時にも再度顔認証を撮られている。これならどこに行っても追跡は簡単なわけだ。
ちょっとでも変わった行動(列を仕切るロープをくぐったり)をしただけで、どこからともなく公安が現れ、パスポートチェックと説教をしていく。
息が詰まりそうだが、常識的な行動を取っていれば、さほど恐れるものではないと思うけど。

セキュリティーと、公安と、警察と、特警と、いろいろ種類があるけど、みんなシャキッとしてて、制服もかっこいい。


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チェックインフロア(4階)にあったんだけど、なんだかわからない。目立ってたので観光気分で他の人と一緒になって撮ってみた。まったくわからない。

 

ホテルは北京国都大飯店(CITIC ホテル 北京 エアポート)到着は18時まわってたので、ホテルの隣の敷地にあるレストランの一つへ、ガイドさんが連れて行ってくれた。
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看板の文字デザインや皿を見て、「中国に来たんだな」と自覚。
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店名の「春餅」は、この黄色い加熱式の鉢に乗ってくる。北京ダックの皮が透けるくらい薄くなったもの。これに、以下の野菜類をなるべく種類豊富に一度に巻き込んでガブッとする。美味!

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これが、海の生き物かと思いきや、ガイドさんは「豆腐」と言うんだけど、だったら、食感は薄いさつま揚げを千切りにしたものという感じ。
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豚バラの甘辛炒め。スパイシーで美味しい!
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そら豆!久しぶり〜。

これも入れて巻く。
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こんなにたっぷりいれても、皮はもっちり弾力があって、破れないで食べられる。
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豚肉がポロポロになるまで煮込まれ、味がしっかりしみこんでいる。これは、もう少し厚手の皮で巻いていただく。右下の茶色のものが、ジャガイモなのか、瓜系なのか、議論が分かれた。見た目は芽をくりぬいた後もあり、でんぷん質の層みたいなのもあるからジャガイモかと思ったが、食感は瓜。と私は思った。

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サービスが良すぎる。シェフが大喜びで、写真を撮っていいと。涙。
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隣はサブウェイだった件。食べてみたかった。
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ミネラルウォーターをファミマで購入。今振り返ると、北京空港の出口にあったファミマが一番安かった。
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売られている水は、「天然水」と「浄水」とがある。値段で違いがわかるが、必ず良く見れば表面に書いてある。

 

翌日は早朝便 北京6:40発。am3時半起床の、4時半ホテル出発。
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手作り感満載の朝食弁当をホテルで持たされ出発。フルーツは嬉しい。一応ウェットティッシュで拭いてみたりしたが、ここで負けてはいられないので、友達の家のおかーさんがもたせてくれたみたいなツナのサンドイッチも完食。具沢山でございました。パンも悪くない。この旅で私の胃腸の丈夫さを証明したい。

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同行者に料理研究家の方がいて、この旅を通しては、加工品で添加物表示があるものについて、ダメな場合は「これはやめときなさい」と言ってくれるので、それ以外は出たもの拒まず。を通す。

 

搭乗ゲートで待っている間に挑戦。生のオレンジが3玉落ちて、順に絞られる100%ストレートジュース。でも、絞っているところは見れないのと、味はどうやったって、少し水いれてる。でも絞りたてのフレッシュ感はあった。中国の100%記述の概念がよくわからん。
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できあがり。15元 この自動販売機、日本でも作って欲しい。正しい100%で。
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見覚えのある飲み物がちらほら。パクリじゃなんだよねえ。
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現在の「元」は、すべて毛沢東だが、40年前にご主人が中国に来た時に持ち帰ったものだと、ある人が持ってきて見せてくれた。少数民族が描かれている。

そのころ外国人が使用できるのは兌換元(だかんげん)のみと、徹底されていたのに、なぜそんなのを持っている?と、ちょっと沸く。おもしろい。
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私が買ってきたオレンジチュースをみて、これで買うといいだしたので、もったいないからやめてくれと必死でお止めした。

さあ、いざ、敦煌へ。

シルクロード特別企画展「素心伝心 」@藝大大学美術館のこと

I.S.C.A Japan定例研究会(8/27)にて、会期が近づく藝大大学美術館で開催される特別企画展について詳しい情報をお伝えいただいた。

The Grand Exhibition on the Silk Road
SOSin-DENSin
Clone Cultural Property: Revitalization of Lost Time

会期:平成29年9/23〜10/26
会場:東京藝術大学大学美術館3F
開館時間:午前10時〜午後5時
     金曜日は午後8時まで開館(入館は閉館の30分前まで)

 

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昨年公開されたバーミヤン大仏の天井壁画の再現、その迫力と想定外の感動はとても印象に残る展覧会だった。
笑い話ではあるが、この開発された技術、今後求められることがあれば、「お金さえもらえればいくらでも作るよ」とこのプロジェクト主宰が言ったとか言わないとか(笑
心意気がかっこいい。

  

この藝大のプロジェクトが行っていること。
クローン文化財の存在が内包する意義。分かりやすく説明されているのは、手に取ることができないはずの作品を体感するということ。


その遺物への回顧と息づかい。顔を近づけ細部を見る、触れる、絵の具や素材の匂い。制作工程の公開と、解明された実際の制作工程。
それが、文化財たる所以と歴史的存在理由、バックグラウンドへの興味を呼び、
文化思想のハブへ導いてくれる。

SOSin-DENSin

-Dens-  模造品、イミテーション、コピー、果てには贋作、これらの言葉に共通する部分を嫌厭する「美術」という分野で、
藝大という若い芸術家が次の時代に送り出さなければならない、新しい芸術分野
破壊と対極の「創造」へ「芸術を担う」という機能を含意させたものとなっている気がする。

展示作品の制作は未だ続いており、一部の作品は公開ぎりぎりまで制作が続く予定となっているそう。
法隆寺釈迦三尊像は中尊の舟形火焔光背の外圏にあったとされる火焔と楽器を持つ飛天の再現がまだ試みられているところ。また、敦煌莫高窟第57窟現在の塑像の首は全て一度失われて後世に補われたものだが、中国側への交渉の結果、唐代の尊顔の造形を復元して挿げ替えられるという。彼ら、本気なのである。

  

sosin-densin.com

シルクロード特別企画展
「素心伝心 ークローン文化財 失われた刻の再生」
The Grand Exhibition on the Silk Road
SOSin-DENSin
Clone Cultural Property: Revitalization of Lost Time

会期:平成29年9/23〜10/26
会場:東京藝術大学大学美術館3F
開館時間:午前10時〜午後5時
     金曜日は午後8時まで開館(入館は閉館の30分前まで)

 

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バーミヤンに学校を建てた中道さんのお話

 

バーミヤンの教育事情について、奈良女子大国際交流センターの中道貞子先生のお話を拝聴。

 

中道先生は、2005年に、バーミヤン中心部から車で1時間程のチャプダラに、自費で学校を建てられた。
女子児童の就学状況に対する思い、建設が完了してしまうと案件を手放してしまう国際NGO団体、学校機能の運用と支援の継続、それらに伴う私たちには想像のつかないご苦労の数々は、笑い話の様で全く笑えないお話であった。

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日本が行なっている多額の支援も、留学生の受け入れも、ちぐはぐのまま行われているような現実。

彼らに今大切なのは、「なぜ、学校に行って勉強をするのか」という、基本5教科以前の教育(啓発)が始まったばかりのところ。
平和を導き出す大切な基盤のところにある。

 中道先生は支援の継続のため、開校以降も毎年バーミヤンの地を訪れ、学校の参観、教師への直接指導を行われていたが、2013年のご訪問を最後に大使館へ何度掛け合ってもビザが発行されなくなり、今年もやはり発給されなかったとの事。

平和と教育、この尊さを軽んじてはいけない。バーミヤンへの道はまだまだ遠い。

 

◆◆追記◆◆

この日、研究会に同席されていた安井さん。

1月放送の世界ふしぎ発見バーミヤンのレポートを協力されたそう。

第1421回大いなる人類の遺産 メソポタミアシルクロード
2017年1月14日 夜9時~
東洋と西洋の文明が交じりあったシルクロードの交差点
これまで一度も取材出来なかった国・アフガニスタンの遺跡を紹介?

バックナンバー|TBSテレビ:日立 世界ふしぎ発見!

 最新のバーミヤンの映像となります。

タリバンに爆破された東西両大仏窟の修復が進められている光景も。イタリアの山岳地帯専門の足場職人や美術修復職人が大きく貢献しているとのこと。たしかに、大聖堂の修復をなどを年がら年じゅう引き受けている彼らの得意分野かも。

近年、大仏の復興を願う地元の人々の声もあり、33mの東大仏復元が協議されている。西大仏は55mと巨大(東寺の五重塔の高さ)であることと、負の遺産として現在の状況を修復保存する向き。

各国から集められた援助金が、国道整備に費やされているが、分断された土地や、潰される遺跡、複数ある民族間の問題を引き起こすトリガーにもなりかねない。

安井さんからの最新の通信が下記で拝読できます。

アフガニスタン文化研究所 NEWS LETTER 第46号
 2017年春に想う・・・・・(写真:安井浩美)
アフガニスタンに生き続ける平山イズム(ユネスコ・カーブル事務所 長岡正哲)
安井浩美のアフガニスタン便り(写真:安井浩美)

生誕300年 [若冲の京都 KYOTOの若冲] @京都市美

 さすがの狩野先生、いい仕事したはります。
若冲画を観て、込み上げてくるものを感じたのはもう何年ぶりか。

生誕300年若冲の京都 KYOTOの若冲|MBS
2016年10月4日(火)~12月4日(日)

#若冲展 #京都市美術館 

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 狂乱のごとく再来した若冲プームの中、
あの極彩色の三十三幅に至る若冲が、何を思い、何を見て、何を描いてきたのか、
絵師のプロセスが集結された出品群。
若冲を愛でてしゃぶりつくした狩野先生だからこその要所が小気味良く押さえられている。

 

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 そのため個人蔵作品も多く取り込まれており、
若冲作品の中でも珍しいモチーフや筆致、初期作品など個性的なものも多く出品されている。

 

作品の配列も、狩野先生らしい、「ならでは」の見せ方。
同じモチーフと構図の米一斗墨画群も、絵師の巧みな試みと筆の勢い、仕掛け。
そこには若冲作品をより深く堪能できる何かが必ずある。
「同じ絵ばかり」と、すっ飛ばさずに、筆の動きを追ってじっくり見て欲しい。

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 このクオリティでの若冲作品を扱う展覧会は、
この先そうそう見られるものではないと思われる。
ぜひおすすめ。

 

 

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若冲の屏風はほとんどがこのような押絵貼屏風

1室のいっとう最初に展示されているこの屏風。構図をどう見るかだけでも、かなり時間を費やせて面白い。

 

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 若冲の鳩、こちらも個人蔵。こちらも次いつ観られるかわかりませんぜっっ。

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生誕300年若冲の京都 KYOTOの若冲|MBS
2016年10月4日(火)~12月4日(日)

京都市美術館

 

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観音の里の祈りとくらし展Ⅱ びわ湖・長浜のホトケたち@東京藝大美術館2016/07/05〜

観音の里の祈りとくらし展 II −びわ湖・長浜のホトケたち−

東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日)午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)

長浜の観音がフルキャストでおでましだ。

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十一面観音立像 平安時代 像高145.4cm 長浜市木之本町 医王寺

かつての天台浄土教のお膝元に深い森と豊かな湖がある。

滋賀県 湖北 長浜の村々で、今も厚い信仰のもと日々の祈りを捧げられているお像が、よくぞここまでお借りできたというほどの勢揃い。 

f:id:itifusa:20160704205801j:image展示室内は一部と文献資料以外はすべてガラスなし。お堂からお出まし頂いた有りの侭のお姿で御ましだ。

くれぐれも抱きついたりしないよう、気をつけたい。

 

「みどころは」といったって、それはもうこの展覧会自体が貴重な機会なので、

  「湖北の観音像が湖山越えずに一日で43軀コンプリート」

 自力でのコンプリートはまず無理ですから。

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十一面観音菩薩立像 室町時代 像高110.8cm 長浜市余呉町国安自治会蔵 

 遠目からも目を引く、体躯の黒みが強く、殊の外ふくよかな頬をした立像。

髻を結い上げる櫛目も豊かに刻まれ、両肘からふわりと浮く天衣と下裙(裳裾)のドレープの表現も美しい。
真っ先にこちらのお像の方へ向かってしまった。

一体どんなモデルがいたのだろうか。

 

だが、真っ先にお越しを報告しなければならないのが、この方かもしれない。
いらしております。千手千足。

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千手千足観音立像 江戸時代 像高42.1cm 長浜市高月町 正妙寺蔵

江戸時代というだいぶ時代を下ったお像だが、やはり他に類例を見ないという造形のお像。

みうらじゅんいとうせいこう見仏記で、一躍有名になった感はあるが、実際にどこに行けばお会いできるのか、という方も多いのではないだろうか。 

今なら、こちらでお会いできまする。

奇想天外この図像。江戸時代という、民衆文化が大きく前進した時代故の発想なのかと思っていたけれど、図録に以下の記述があった。

 ー鎌倉時代の天台系図像集『阿沙縛抄』『白宝抄』に「千足観音」の記載が見られ、

 この地に千の足を持つ像が伝わる背景には、台密の影響があったことが窺われる。

 なお、今回、周囲ぐるっと見て回れるため、禁断の後ろ姿が。

f:id:itifusa:20160705003122j:plain松葉蟹ではない。

 

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観音菩薩立像 1216年(建保4年)

像高172.7cm 長浜市余呉長菅並 洞寿院 観音堂安置

ヒノキ一木造の等身像。彩色のみられない胴体は節や木目をそのままにした素地で仕上げられ、肩から背面にかけては多くノミ目を残している。

宗旨が変わった際に別途、観音堂を設けられたのかと想像するが、
33年に一度ご開帳となる秘仏とのこと。
今年の9月がちょうど33年目のご開帳の年とのことで、一足先に、しかも、お堂を出て展覧会初登壇。申し訳ないような気もするが、
人の信仰によって守られてきた本義の姿に、私たちはここで触れられるのだ。
是非、お会いになってほしい。

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ヒノキの大木の節の部分の前に、ちょうど右手の印が。放射効果が感じられませんか。

平安から鎌倉のお像が驚くほどの数で残される里山
民間信仰の色濃いお像は、良い意味で図像にとらわれることなく、貴族や政治から離れ、比叡の麓でいかにして仏教が民間に浸透して行ったのか。
木彫のお像の、頬や肩、胸部や掌にみえる鉈目や、木目と節。
目で辿れば、その厚い信仰の変遷が見えてくるのです。

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聖観音立像 平安時代 像高178.8cm 長浜市弓削町 来現寺蔵

展示室内、中央におわすのがこのお像。
ゆるく右足を外向きに出し、裾に広がる造形が、体幹のすわった雄々しい立ち姿にしている。
かっこいいな、、、と周りを何周もして見入ってしまった。
図録にある弓削町の由縁など、興味深い記述がある。
いずれ、この町にも訪れてみたい。

土着の信仰、霊木と立木仏、本地、浄土への祈りと観音が表す神変、感得。と、滋賀の観音像が持つ貴重な歴史は、日本仏教の姿をありのままに伝えてくれる、あぁ、もう想像しただけでヨダレが。。。。

殆どの仏様が、中世の戦乱や廃仏棄釈以降、村人の当番制によって守られてきている、民間信仰のあり方を今に伝える貴重なお像。
再度、時間をかけて、ありがたく拝見しに行こうと思っている。

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図録はB5版でハンドブックタイプ。ちょっとした長浜ガイドブックになる。
巻末に『持論』として解説者のコラムが複数掲載されている。その中で特に印象的だった一譚がある。

 

 ー借用の際、「足に毛布でも掛けといたってくれや」と(世話方に)声をかけられた。戦火から守るために川に沈めて、手先・足先を失ったと伝える像である。堂内での拝観では目立たないが、明るい展示室では足元まで見えるので、痛ましい姿を気づかってのことである。
   『びわ湖・長浜のホトケたちII』p148
   「ウチの観音さん〜湖北の人々のホトケに対する思い〜 佐々木悦也 著

 

言いたいことはまだまだ山ほどあるが、以下はせっかくなので画像を掲出。
観覧者の好みによって、2時間や3時間はあっという間に過ごせる展覧会になっている。

藝大、今回もいい仕事されてます(涙

観音の里の祈りとくらし展 II −びわ湖・長浜のホトケたち−

東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日)
午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)

 

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持国天立像 平安時代
像高182.7cm 長浜市木之本町 石道寺蔵

本尊脇に祀られる、十一面観音立像と両脇侍、石道寺さんは大盤振る舞いの御三家でおましです。持国天邪気の踏まれっぷりをご堪能ください。

 

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馬頭観音マニア垂涎の3軀手前から、

馬頭観音座像 平安時代 103.2cm 
長浜市西浅井町山門自治会

馬頭観音立像 平安時代 99.6cm
長浜市高月町 横山神社

馬頭観音立像 鎌倉時代 80cm
長浜市西浅井町 徳円寺

        右画像は徳円寺像の足元。

f:id:itifusa:20160704210454j:image薬師如来立像 平安時代 159.4cm
長浜市高月町 充満寺

 後補部分が多く見受けられ、補修のための漆塗りの赤が特徴的なお像だが、しっかりした安定感がよかった。

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 聖観音立像 平安時代 100.1cm  長浜市宮司町 総持寺

 

 

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観音の里の祈りとくらし展 II −びわ湖・長浜のホトケたち−

東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日) 午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)

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『神曲』講座/最終回 第28歌 第九巣窟/分裂先導者

月1ではあったけど、一年以上になった原先生の『神曲』講座も一旦終了。原先生は10年以上に及んだ訳業の総括ともなる論文執筆に入られる。

原先生はご実家の家が京都市内にあり、神曲新訳版執筆中の殆どを京都で過ごされている。京都の地がそういったアカデミックな活動に群を抜いて適した環境であることがよくわかる。 

まずは、その集大成が世に送り出されるのを楽しみに待ちたい。

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 最後の講義は「地獄篇」第28歌。

26歌、27歌と3詩篇で、一つの集合体を引き裂いた罪が問われる。

特に28歌は現代の私たちも、ダンテが何を憂い、罪を洗い出し、世界を変えていこうとしていたのかを、改めて読み解く必要のある詩篇。そこには彼ムハンマドが世界を割いた咎により、体を引き割かれた姿を曝す。その凄まじい描写は日本語訳を通しても重く、人類がその意思をもって踏み外してしまった過ちが如何なる結果をもたらすのかを、目を背けたくなる様な姿で否応なく目の前に表す。

このムハンマドダンテによって裁かれる28歌は、現代のイスラム圏でも未だ削除されているという。西アジアとヨーロッパの、政治と宗教の距離感がとてもよくわかる。

時代背景と当時の歴史観を踏まえれば、ダンテがムハンマドをこの圏に置いた理由も致し方がない。だが、ダンテのこの大きな誤りが、その後決定的にイスラムキリスト教世界を分かつ一因となる。
この功罪を、先人の最高の叡智として、現代の私たちは真理を認識するべき時代になっているのだと思う。 

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なお、先生は様々な理由からも本年度の提出という着地を課していらっしゃるので、論文が日を浴びるのも近く明らか。大丈夫♪

またそのうち。を期待しております。(勉強しております)

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神曲 地獄篇 (講談社学術文庫) ダンテ・アリギエリ (著), 原 基晶 (翻訳)

 

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