びぶりおてか

私家版 Caffè Biblioteca

起雲閣の隠された窟

知らない街で路線バスに乗るのは好きだ。
乗り降りや運賃の支払い方法がそこによって異なるのを確認すれば、あとは地元っこぶるだけ。
ぶっているので、乗り間違えたときは慌てず、適当な停留所まで行って、降りて(人知れず)帰ってくる。

熱海の路線バスは三社程が走ってるけど、すべて前扉乗降で整理券制。
後ろ扉は使わずに前扉から降りる人が終わると、乗る人がわらわらと入ってくる。
車掌さんの一元管理体制だ。なんでそうなったんだろか。
乗客は徹底的に、地元のご年配なので、どんなに混雑していてもステップの高い座席は空いている。

熱海駅から④番のバスに乗って、漸く起雲閣に到着できた。
受付のおねーさんも、外のスタッフの方々も皆、明るくて感じがいいのね。
好きですそういうところ。

本当に見事な作りの建物って、入った瞬間、最初の一歩で空気の移動や壁、床、柱の揺るぎなく重厚な様、母性的な包容力が体感される。そんな家だった。


二階への階段など、重厚すぎないステップや手すり、踊り場の空間は、なじみ深く懐かしい安心感。
写真をとってもそれがうまく映らないのであきらめる。
和室は旅館だった時期をあまり思わせない、上品なシンプルさ。
滞在している部屋がこんなだったら、本当に我が家の様にくつろげたろうな。



全面手漉きのガラスが残っており、眼下に広がる庭園と春を思わせる陽光を優しく見せます。

よく、割らずに残ってるな。。。
ウチはもうほとんど残っていない。


この最初の日本屋が初代のオーナーが立てた建物。
その後、隣に続く洋館作りの建物と、庭園を
次のオーナー、根津嘉一郎氏が作る。
それが今回の目的。



日本屋から続く廊下に玄関口が設えられ、
すぐ右手にモザイクタイルのサンルームがある。
日本屋の二階から見えていて、まさか仲間で入れるとは思っていなかったが、
自由に入れる。第一歩で声を上げたくなるような一室。



洋館と言うよりは東洋の美を日本人なりにいいとこ取りといったところ。

庭園といい、この建物といい、根津氏の美意識に澁澤以来のものを感じる。
良いものを見せていただきました。












 
 
このモザイクのサンルームの後ろにダイニングなのか、大テーブルの部屋がある。
徹底した美意識の集結。
お金持ちの、正しいお金の使い方だ。
 
どうも写真を撮り忘れた様だが、このほかにもう一室、暖炉のあるリビングがある。
 
暖炉の上には、あらあら、どっからもって来ちゃったのか、唐代頃であろう、如来三尊仏龕がはめ込まれている。
部屋の梁や柱のすべてに、横筋の鉈彫りの後を残し、要所に蓮華とパルメットの意匠を施している。
 
 
 
ああ、この建物って本当に洋館ではなくて、シルクロードなんだな、と思った。
それがこの方のこだわりなんだだな。と。
 
 
 
 
そして、シルクロードは、西域を超え、ローマにたどり着く。
 
 
やはりここも、すべての道はローマへと続いていた。。。。
 
この当時は温泉は出てなかったと思われるので、あまり暖かくないお風呂だったろうな。。。
 
 
 
その後のオーナーによって立てられた旅館棟などを通り抜け、館内は一周出来るようになっている。
いろいろ勉強になる、本来の日本の粋を見させていただきました。
最後に戻った日本屋の一階の部屋にある展示資料に、かつての東洋館(もうそう呼ぶ)の写真があり、確信。
 
建物の土台部分の石組みにほこらが作られており、中に仏像が置かれている。
やはり、彼がやりたかったことはこれだったのね。
と、ファーストインプレッションの美意識の共鳴に、個人的納得。うれしい。
 
 
今はその石窟(あえて)は蔓性の植物に覆われてしまっている。
 
でも、あった。
ツタをめくって確認してきた。
仏像は当然ありませんが、窟はあった。
 
ツタをはらって、窟を出すべきだ。。。