びぶりおてか

私家版 Caffè Biblioteca

『睡眠-Sleep-』勅使川原三郎@東京芸術劇場

勅使川原氏の舞台、何年ぶりでしょか。
あの時点よりもバージョンアップがまだあったのですね。そりゃそうか。
 
東京芸術劇場の樂日。

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土着の舞踊は、大地に気を降ろすことで得る感覚で、
西洋で中世に発祥したバレエの場合は上へ上へと、より高く向かう物理的な能力を求めるのではないか。
勅使川原氏の舞踊はそのどちらにも属さず、そこにある空間そのものとして存在する。
 
激しい動きであっても、それに無駄が一切無いから空気は微動だにしない。
人の脳が、身体がリミットを外し、その並外れた身体能力の前には、
もはや三次元以外の境界に立ち入っている気さえしてしまう。
 
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古代信仰の思想に近い表現を借りるなら、空間という区切られた次元に在る不可視なはずの存在を、今この時だけ現し、知らしめられているような。
神とか精霊といった次元ではない、意義のような、
性別や人格の区別を許さない「存在の意義」だ。

光が絶対的な境界を作り出し、そこに切り取られた空気は、
音を伝える為だけの物質にすぎない。
彼の存在がその空間に在る以上、ただ控えて待つだけの物質だ。
 
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感動に勢い衝かれた饒舌の嫌いがあるが、不可視的存在を目の当たりにしたトランスとは、それこそ彼の思うツボなのではないか。
 
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最終譚、真っ白な衣装の佐東利穂子氏の、全てを制しつつも、ゆるやかに臥していく様。
胸を締め付けられる様な感動に、目頭が熱を帯びた。

失敗した。東京公演、もう一回観ておくべきだった。
 
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それでも、あの方の頭の中はこんな感じ。
 
 
勅使川原三郎氏のインタビュー動画の視聴と、タイトルコンセプトは、
余計な事を考えずに見たかったので、敢えて見ずに、先に舞台を観たが、
狙っているコンセプトがダイレクトに伝わって来ていた事がわかる。
少しでも共鳴できていたのではないか、と遠慮がちにも嬉しい。
この人の表現というエネルギーは人智を凌駕していくんだ。
 
もう一回観ておくべきだった。東京で。
 

 
 
勅使川原三郎新作 世界初演『睡眠-Sleep-』

構成・振付・美術・照明:勅使川原三郎
出演:オーレリー・デュポン佐東利穂子勅使川原三郎 他

東京公演:東京芸術劇場 8月14日(木)〜8月17日(日)

8月21日(水)19:00 愛知県芸術劇場大ホール
8月23日(土)18:00 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール