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アイハヌム・ゼウス像 想定復元 @東京藝術大学陳列館

アフガニスタン アイ・ハヌムの遺物 ゼウスの左足を基に
藝大で想定復元されたゼウスの胸部までの像が現在公開されている。 

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ゼウス神像左足の実物は連動する東博のアフガニスタン展で日本に限って公開されているが、サンダルのハナオ部分(これが多くを語る大事な部分)から爪先の約30センチほどの大理石製破片。

 

東京藝術大学アフガニスタン特別企画展」
東京藝術大学 大学美術館陳列館 2016年4月12日(火)― 6月19日(日)

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「アイハヌム・ゼウス像」の想定復元は、藝大に拠点を置く研究室が世界中に残るゼウス像の形態を研究し尽くした結果として復元されたそう。

 
どっしりと左右を大きく開き、地につけているものを想像していたのだが、左足爪先の角度から、後ろに引っ込めかかとを浮かせた状態であったと判断されたそうだ。 
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そう言われてから改めて東博展示の遺物を見てみると、本当だ、確かに土踏まずのあたりから微妙に傾斜しているのです。
 
復元像のたっぷりと膝を覆うドレープ、その先に続く隆々とした筋肉は若々しささえ感じさせる。
個人的にもつ、豊かな髭を蓄え、少し年配のゆったりした貫禄をもつゼウスのイメージとは少し違うのだけど、ギリシア彫刻の流れを直流で受け止め、
今まさに活気ある都市が求めた大神像とは、誰にも勝る瑞々しさと力強さの象徴たるものだったに違いない。
 
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アレクサンドリアを想わせるこの都市の大きな神像が、
その後東伝する宗教彫像文化を、習俗を、どれだけ動かした事だろうと思うと、その胸にすがりつきたくなる。

研究室の皆様、良い仕事をしてくださった。
 
この藝大の展覧会では、藝大で保護されていた流出文化財の一部も公開されている。
東博アフガニスタン展」第5章のアフガニスタン流出文化財 と同等のもの、
この公開を終えると祖国カーブル国立博物館へ帰還する「文化財難民」
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焔肩仏立像 3-4世紀 カピサ 57cm
中央アジア特有の焔背を背負ったお像。
拝火教崇拝が残るこの地で、それまで、偶像を嫌い法輪など象徴物で仏を表していた仏教が、人型を取った象徴物で仏陀を表すようになった起源の名残なのではないだろうか。
 
f:id:itifusa:20160418204240j:imageその右肩上にはブラフマー仏教では梵天
 
 
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執金剛 ヴァジュラパーニ 3-4世紀 ハッダ出土
ガンダーラ文明出自の図像だが、ほとんどギリシャ人ではないか。。。。
 
ゼウスの雷に由来する象徴物を金剛杵として取り込み、それを担ったのが執金剛。
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仏教はこの美しいドレープもお好みであった。
 
 
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降魔成道図 2-3世紀 カピサ 54cm
釈迦が悟りを開くとき、地に触れ魔障(マーラ)を退散させる。
 
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釈迦の頭上に華やかに咲き乱れるような逆ハートの葉は菩提樹
 
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取り囲む聖獣の中には西アジア由来のデザインも見受けられる。
 
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下に押しつぶされる魔障たち
 
f:id:itifusa:20160418204153j:imageこの右肩にも梵天か。左は欠損している。
 
 
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館を出たら早朝までの大風がウソのような青空。
神駆ける大空だ。