びぶりおてか

私家版 Caffè Biblioteca

バーミヤンに学校を建てた中道さんのお話

 

バーミヤンの教育事情について、奈良女子大国際交流センターの中道貞子先生のお話を拝聴。

 

中道先生は、2005年に、バーミヤン中心部から車で1時間程のチャプダラに、自費で学校を建てられた。
女子児童の就学状況に対する思い、建設が完了してしまうと案件を手放してしまう国際NGO団体、学校機能の運用と支援の継続、それらに伴う私たちには想像のつかないご苦労の数々は、笑い話の様で全く笑えないお話であった。

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日本が行なっている多額の支援も、留学生の受け入れも、ちぐはぐのまま行われているような現実。

彼らに今大切なのは、「なぜ、学校に行って勉強をするのか」という、基本5教科以前の教育(啓発)が始まったばかりのところ。
平和を導き出す大切な基盤のところにある。

 中道先生は支援の継続のため、開校以降も毎年バーミヤンの地を訪れ、学校の参観、教師への直接指導を行われていたが、2013年のご訪問を最後に大使館へ何度掛け合ってもビザが発行されなくなり、今年もやはり発給されなかったとの事。

平和と教育、この尊さを軽んじてはいけない。バーミヤンへの道はまだまだ遠い。

 

◆◆追記◆◆

この日、研究会に同席されていた安井さん。

1月放送の世界ふしぎ発見バーミヤンのレポートを協力されたそう。

第1421回大いなる人類の遺産 メソポタミアシルクロード
2017年1月14日 夜9時~
東洋と西洋の文明が交じりあったシルクロードの交差点
これまで一度も取材出来なかった国・アフガニスタンの遺跡を紹介?

バックナンバー|TBSテレビ:日立 世界ふしぎ発見!

 最新のバーミヤンの映像となります。

タリバンに爆破された東西両大仏窟の修復が進められている光景も。イタリアの山岳地帯専門の足場職人や美術修復職人が大きく貢献しているとのこと。たしかに、大聖堂の修復をなどを年がら年じゅう引き受けている彼らの得意分野かも。

近年、大仏の復興を願う地元の人々の声もあり、33mの東大仏復元が協議されている。西大仏は55mと巨大(東寺の五重塔の高さ)であることと、負の遺産として現在の状況を修復保存する向き。

各国から集められた援助金が、国道整備に費やされているが、分断された土地や、潰される遺跡、複数ある民族間の問題を引き起こすトリガーにもなりかねない。

安井さんからの最新の通信が下記で拝読できます。

アフガニスタン文化研究所 NEWS LETTER 第46号
 2017年春に想う・・・・・(写真:安井浩美)
アフガニスタンに生き続ける平山イズム(ユネスコ・カーブル事務所 長岡正哲)
安井浩美のアフガニスタン便り(写真:安井浩美)

生誕300年 [若冲の京都 KYOTOの若冲] @京都市美

 さすがの狩野先生、いい仕事したはります。
若冲画を観て、込み上げてくるものを感じたのはもう何年ぶりか。

生誕300年若冲の京都 KYOTOの若冲|MBS
2016年10月4日(火)~12月4日(日)

#若冲展 #京都市美術館 

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 狂乱のごとく再来した若冲プームの中、
あの極彩色の三十三幅に至る若冲が、何を思い、何を見て、何を描いてきたのか、
絵師のプロセスが集結された出品群。
若冲を愛でてしゃぶりつくした狩野先生だからこその要所が小気味良く押さえられている。

 

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 そのため個人蔵作品も多く取り込まれており、
若冲作品の中でも珍しいモチーフや筆致、初期作品など個性的なものも多く出品されている。

 

作品の配列も、狩野先生らしい、「ならでは」の見せ方。
同じモチーフと構図の米一斗墨画群も、絵師の巧みな試みと筆の勢い、仕掛け。
そこには若冲作品をより深く堪能できる何かが必ずある。
「同じ絵ばかり」と、すっ飛ばさずに、筆の動きを追ってじっくり見て欲しい。

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 このクオリティでの若冲作品を扱う展覧会は、
この先そうそう見られるものではないと思われる。
ぜひおすすめ。

 

 

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若冲の屏風はほとんどがこのような押絵貼屏風

1室のいっとう最初に展示されているこの屏風。構図をどう見るかだけでも、かなり時間を費やせて面白い。

 

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 若冲の鳩、こちらも個人蔵。こちらも次いつ観られるかわかりませんぜっっ。

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生誕300年若冲の京都 KYOTOの若冲|MBS
2016年10月4日(火)~12月4日(日)

京都市美術館

 

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観音の里の祈りとくらし展Ⅱ びわ湖・長浜のホトケたち@東京藝大美術館2016/07/05〜

観音の里の祈りとくらし展 II −びわ湖・長浜のホトケたち−

東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日)午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)

長浜の観音がフルキャストでおでましだ。

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十一面観音立像 平安時代 像高145.4cm 長浜市木之本町 医王寺

かつての天台浄土教のお膝元に深い森と豊かな湖がある。

滋賀県 湖北 長浜の村々で、今も厚い信仰のもと日々の祈りを捧げられているお像が、よくぞここまでお借りできたというほどの勢揃い。 

f:id:itifusa:20160704205801j:image展示室内は一部と文献資料以外はすべてガラスなし。お堂からお出まし頂いた有りの侭のお姿で御ましだ。

くれぐれも抱きついたりしないよう、気をつけたい。

 

「みどころは」といったって、それはもうこの展覧会自体が貴重な機会なので、

  「湖北の観音像が湖山越えずに一日で43軀コンプリート」

 自力でのコンプリートはまず無理ですから。

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十一面観音菩薩立像 室町時代 像高110.8cm 長浜市余呉町国安自治会蔵 

 遠目からも目を引く、体躯の黒みが強く、殊の外ふくよかな頬をした立像。

髻を結い上げる櫛目も豊かに刻まれ、両肘からふわりと浮く天衣と下裙(裳裾)のドレープの表現も美しい。
真っ先にこちらのお像の方へ向かってしまった。

一体どんなモデルがいたのだろうか。

 

だが、真っ先にお越しを報告しなければならないのが、この方かもしれない。
いらしております。千手千足。

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千手千足観音立像 江戸時代 像高42.1cm 長浜市高月町 正妙寺蔵

江戸時代というだいぶ時代を下ったお像だが、やはり他に類例を見ないという造形のお像。

みうらじゅんいとうせいこう見仏記で、一躍有名になった感はあるが、実際にどこに行けばお会いできるのか、という方も多いのではないだろうか。 

今なら、こちらでお会いできまする。

奇想天外この図像。江戸時代という、民衆文化が大きく前進した時代故の発想なのかと思っていたけれど、図録に以下の記述があった。

 ー鎌倉時代の天台系図像集『阿沙縛抄』『白宝抄』に「千足観音」の記載が見られ、

 この地に千の足を持つ像が伝わる背景には、台密の影響があったことが窺われる。

 なお、今回、周囲ぐるっと見て回れるため、禁断の後ろ姿が。

f:id:itifusa:20160705003122j:plain松葉蟹ではない。

 

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観音菩薩立像 1216年(建保4年)

像高172.7cm 長浜市余呉長菅並 洞寿院 観音堂安置

ヒノキ一木造の等身像。彩色のみられない胴体は節や木目をそのままにした素地で仕上げられ、肩から背面にかけては多くノミ目を残している。

宗旨が変わった際に別途、観音堂を設けられたのかと想像するが、
33年に一度ご開帳となる秘仏とのこと。
今年の9月がちょうど33年目のご開帳の年とのことで、一足先に、しかも、お堂を出て展覧会初登壇。申し訳ないような気もするが、
人の信仰によって守られてきた本義の姿に、私たちはここで触れられるのだ。
是非、お会いになってほしい。

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ヒノキの大木の節の部分の前に、ちょうど右手の印が。放射効果が感じられませんか。

平安から鎌倉のお像が驚くほどの数で残される里山
民間信仰の色濃いお像は、良い意味で図像にとらわれることなく、貴族や政治から離れ、比叡の麓でいかにして仏教が民間に浸透して行ったのか。
木彫のお像の、頬や肩、胸部や掌にみえる鉈目や、木目と節。
目で辿れば、その厚い信仰の変遷が見えてくるのです。

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聖観音立像 平安時代 像高178.8cm 長浜市弓削町 来現寺蔵

展示室内、中央におわすのがこのお像。
ゆるく右足を外向きに出し、裾に広がる造形が、体幹のすわった雄々しい立ち姿にしている。
かっこいいな、、、と周りを何周もして見入ってしまった。
図録にある弓削町の由縁など、興味深い記述がある。
いずれ、この町にも訪れてみたい。

土着の信仰、霊木と立木仏、本地、浄土への祈りと観音が表す神変、感得。と、滋賀の観音像が持つ貴重な歴史は、日本仏教の姿をありのままに伝えてくれる、あぁ、もう想像しただけでヨダレが。。。。

殆どの仏様が、中世の戦乱や廃仏棄釈以降、村人の当番制によって守られてきている、民間信仰のあり方を今に伝える貴重なお像。
再度、時間をかけて、ありがたく拝見しに行こうと思っている。

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図録はB5版でハンドブックタイプ。ちょっとした長浜ガイドブックになる。
巻末に『持論』として解説者のコラムが複数掲載されている。その中で特に印象的だった一譚がある。

 

 ー借用の際、「足に毛布でも掛けといたってくれや」と(世話方に)声をかけられた。戦火から守るために川に沈めて、手先・足先を失ったと伝える像である。堂内での拝観では目立たないが、明るい展示室では足元まで見えるので、痛ましい姿を気づかってのことである。
   『びわ湖・長浜のホトケたちII』p148
   「ウチの観音さん〜湖北の人々のホトケに対する思い〜 佐々木悦也 著

 

言いたいことはまだまだ山ほどあるが、以下はせっかくなので画像を掲出。
観覧者の好みによって、2時間や3時間はあっという間に過ごせる展覧会になっている。

藝大、今回もいい仕事されてます(涙

観音の里の祈りとくらし展 II −びわ湖・長浜のホトケたち−

東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日)
午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)

 

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持国天立像 平安時代
像高182.7cm 長浜市木之本町 石道寺蔵

本尊脇に祀られる、十一面観音立像と両脇侍、石道寺さんは大盤振る舞いの御三家でおましです。持国天邪気の踏まれっぷりをご堪能ください。

 

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馬頭観音マニア垂涎の3軀手前から、

馬頭観音座像 平安時代 103.2cm 
長浜市西浅井町山門自治会

馬頭観音立像 平安時代 99.6cm
長浜市高月町 横山神社

馬頭観音立像 鎌倉時代 80cm
長浜市西浅井町 徳円寺

        右画像は徳円寺像の足元。

f:id:itifusa:20160704210454j:image薬師如来立像 平安時代 159.4cm
長浜市高月町 充満寺

 後補部分が多く見受けられ、補修のための漆塗りの赤が特徴的なお像だが、しっかりした安定感がよかった。

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 聖観音立像 平安時代 100.1cm  長浜市宮司町 総持寺

 

 

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観音の里の祈りとくらし展 II −びわ湖・長浜のホトケたち−

東京藝術大学大学美術館 本館 展示室3、4
会期: 2016年7月5日(火)- 8月7日(日) 午前10時 - 午後5時(金曜日は午後8時まで)

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『神曲』講座/最終回 第28歌 第九巣窟/分裂先導者

月1ではあったけど、一年以上になった原先生の『神曲』講座も一旦終了。原先生は10年以上に及んだ訳業の総括ともなる論文執筆に入られる。

原先生はご実家の家が京都市内にあり、神曲新訳版執筆中の殆どを京都で過ごされている。京都の地がそういったアカデミックな活動に群を抜いて適した環境であることがよくわかる。 

まずは、その集大成が世に送り出されるのを楽しみに待ちたい。

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 最後の講義は「地獄篇」第28歌。

26歌、27歌と3詩篇で、一つの集合体を引き裂いた罪が問われる。

特に28歌は現代の私たちも、ダンテが何を憂い、罪を洗い出し、世界を変えていこうとしていたのかを、改めて読み解く必要のある詩篇。そこには彼ムハンマドが世界を割いた咎により、体を引き割かれた姿を曝す。その凄まじい描写は日本語訳を通しても重く、人類がその意思をもって踏み外してしまった過ちが如何なる結果をもたらすのかを、目を背けたくなる様な姿で否応なく目の前に表す。

このムハンマドダンテによって裁かれる28歌は、現代のイスラム圏でも未だ削除されているという。西アジアとヨーロッパの、政治と宗教の距離感がとてもよくわかる。

時代背景と当時の歴史観を踏まえれば、ダンテがムハンマドをこの圏に置いた理由も致し方がない。だが、ダンテのこの大きな誤りが、その後決定的にイスラムキリスト教世界を分かつ一因となる。
この功罪を、先人の最高の叡智として、現代の私たちは真理を認識するべき時代になっているのだと思う。 

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なお、先生は様々な理由からも本年度の提出という着地を課していらっしゃるので、論文が日を浴びるのも近く明らか。大丈夫♪

またそのうち。を期待しております。(勉強しております)

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神曲 地獄篇 (講談社学術文庫) ダンテ・アリギエリ (著), 原 基晶 (翻訳)

 

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アフガニスタン文化研究所 定例研究会にて

アフガニスタン文化研究所 54回定例研究会を、今回も拝聴させていただく。

御茶女国際協力研究室の青木氏による、現在の外交と安全保障についての報告。
青木さんは、2007年の退去勧告以降、公的職務でアフガニスタンに入られていた数少ない邦人。多くの画像資料と、現状をフルボリュームでお話しくださった。

以下はそのメモに個人的な感想をあわせて。

2014年末の米軍をはじめとする多国軍戦闘部員配置の削減と戦闘から側面支援への変更は、自国軍12千しかもたないアフガニスタンの治安に大きな空白を与える。国土は日本の約1.8倍。多民族国家の上に山脈の向こうは四方全て諸外国と地続き、他国の武装勢力も後を絶たない。自国軍の数に反映される現在の国力では取り戻すべき治安の安定など遠い話だ。

 

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一方でターリバーンとの和平交渉も完全とはいえない。彼らは米軍が行った "正当性のない空爆"を決して許さず、全てが撤退するまでは攻勢を止めないことを主張している。

彼らの国政への参加も軍政議席を増やすことでバランスの維持はますます容易ではなくなるのではないだろうか。

インフラ整備はゆっくりとも進んでいる。カーブルを中心に各国の支援で複数の鉄道の敷設も計画されている。武装勢力の妨害を恐れつつもそれらが成功すれば、少なからず情勢は改善されるのだろう。
永続的な観光資源がある事を忘れないでほしい。

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カーブルの現在の夜景写真が映し出された時、内戦前のカーブルを知る諸先輩方が一斉にあげた歓声はとても心に残った。

カーブルや主要都市を少し離れれば、固有の民族が、その大地に暮らす。
今現在まで何世紀もの間、その生活形態を変えることなく継がれてきた民族の血に、他国の軍事力による制圧がどの様に写っているのだろう。それらのやり方で解決の日が訪れるのだろうか。

カーブルを中心とした敷設予定の鉄道路線図、ドイツ支援のラインだったか、経由地を繰り返し確認して「これが轢かれたら、ティリア・テペまで鉄道で行けるじゃないか」と声を張った前田先生がなんとも印象的であった。これは、その苦労をご存知の方には是非もない話であろう。

願わくば近い将来、あの美しい大地に自由に降り立つことが出来る日がくることを心から願う。

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http://isca-japan.jimdo.com/

 

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『メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館3D/4K』試写会にて

今夏公開の映画

『フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館3D/4K』
試写会と美術史家の池上英洋氏登壇のトークイベントへ。

 

見終わってからの第一声が、池上英洋氏と同じ
「ドローンってすごい」
だったので、本当にすごいんです。 

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いえいえ、この「すごい」には、

①冒頭、フィレンツェを取り囲む森を抜け、遠くに赤レンガ屋根の街がだんだん近づいてくる。サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂が。。。。という血がたぎってからだが熱くなるほどの素晴らしい空撮。

 

②雨ざらしなのが信じられないほどの街の彫像を見事な構図でなめていく映像カット。

 

③そしてドローンが搭載しているであろう4Kカメラの凄さ。

といったこの映画すべてへの賛美が込められているのです。

おそらく時間的には、ウフィツィ美術館内へ入っていく(ドローンは入っていかない)までの映画前半がほぼ、ドローン大活躍映像。その映像にストーリー性が盛り込まれ、登場人物の語りとともに、時間を超えてフィレンツェを概観、ストーリーにどんどん引き込まれて行っているという、イタリアファンは没入間違いなしの展開でした。

もう、予告だけでも何回も見てしまっている。

 

 昨年の「ヴァチカン美術館4K/3D 天国への入口」から更に内容はグレードアップしていて、作品解説で進めていく形式は同じだけど、映像とドラマチックなストーリーは90分の集中力を難なく持続させてくれる。

 

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冒頭の森を抜け、赤レンガの大聖堂を越え、場面が落ち着いた屋敷の中に変わる。

あれ?美しい光沢を帯びたシルクのスーツに、目にも鮮や、かまーっ赤っかのストールをかけた紳士。
もしや(まさか)と思ったが、ご想像の通り、時空を越え現代のスーツに身を包んだロレンツオの霊だった。
個人的には見ているうちに、だんだんあのロレンツオの肖像に似てきたし(顎のあたり)、結構かっこよかったようなきがする。。。>幻想?


美術品の数々を、禁を犯しているのではないかとどきどきするような視点から、精密映像で舐めるように映し出してくれる。

実際に見れない角度や近さで見る人物たちの表情と視線は、これまでとは全く違った姿で、このイメージを蓄えて改めてフィレンツェへ乗り込んで行き、彼らと対面したいという欲望が疼く。

そしてまた、バックに流れる音楽がとてもよくて、映像とともに重厚さや、歴史が持つ生命力を彷彿させてくれるし、最先端技術の映像作品の鑑賞とはこういうことなのか。と、感動はより一層増すばかり。

これは本当に、大きなスクリーンの映画館でもう一度観なくてはいかん。

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 ウフィツィ館長(-2015)ナターリ氏の解説は作品が持つ思想,哲学を、構図や構成から読み取る古典文学の知識の重要性を説く。
イタリア視覚芸術の鑑賞方法が一変する内容。

 

映画『フィレンツェ,メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館』オフィシャルサイト「作品解説」

 

イル・マニーフィコが重要視していたのが、哲学者や詩人だった。とりわけ詩人は神の言葉を写すとして尊ばれ、その詩人たちが編む歌を、視覚化するのが、画家や彫刻家だった。

f:id:itifusa:20150226111831j:plain※手持ちの画集より

この映画に紹介されるロレンツオゆかりの絵画の数々は、それぞれが、それらの思想や哲学、美しい言葉のやり取りをいとも具体的に構図として表しており、歴史を紐解くことによって、構図のストーリーが動きだす。
これはたまらん。

フィレンツェに行かなくては〜。

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「東方三博士の礼拝」 レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

来年あたり、ダ・ヴィンチの"東方三博士の礼拝" だのネロの黄金宮とか修復後公開(されると勝手に決めている)楽しみだ。

そうだ。イタリアにいかなくては〜。

 

uffizi4k3d.com

 

映画『フィレンツェ、メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館3D/4K』 | 弐代目・青い日記帳

 

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冒頭の空撮の話の繰り返しにはなるが、
この先に目指すフィレンツェの街が本当にあるのだろうか、というほどの原生林から光の射す方へ向かい、フィレンツェを取り囲む丘陵地の森の上空に抜ける。
13世紀の金融バブルの折の建設ラッシュのにより、そのほとんどの森はことごとく伐採されていたため、当時の絵地図を見ても、禿げたなだらかな丘陵帯が描かれている。
だが、14世紀、ダンテや、15世紀のマキアベッリが、無念にもフィレンツェ後にし、この森を抜けて行ったのかもしれない。と想像すると、潤いある緑の上を滑空するドローンの活躍に、席を立って拍手喝さいしたい気分だった。


ここに、ナターリ氏が力強く訴えていた、構図が意図するものとは、どういったことなのか。1篇の詩を紹介したい。ロレンツオの弟、ジュリアーノが催した馬上槍試合を記念して、詩人、アンジェロ・ポリツィアーノが書いた作品だ。

『馬上槍試合のためのスタンツェ』

 けがれのない白、それは彼女、その服さえ清らかな白だが、
 ただバラはもちろん花々と緑の草が描かれ、
 輝く禁の前髪が巻きながら、
 謙虚に誇らしげな、その顔にかかっている。

 彼女は楽しげな緑の草原の上に座り、
 自然がこれまでに創造したあらゆる花々で
 編まれた花冠を載せていた、
 その同じ花々は衣にも描かれていた。

 そして若者が気がついたその瞬間、
 わずかに怯えながら顔をあげ、
 それから白い手で裾をつまんで広げながら、
 溢れかえるような花の中に立ち上がった。

 そして、まるで空が隅々までを輝かせたのと同じように、
 喜びのひろがる顔に微笑みをあふれさせながら
 草原のうえでゆっくりと歩みを進めていった、
 愛を呼び起こさずにはいられない慈しみに飾られた様子で。

 そして(ジュリアーノは)見つめながら想い続けている、
 彼を苦しみから助けようなどとは思わぬ彼女を、
 心のうちで、彼女の天井にあるかのような甘美な歩みと
 天使の衣の羽ばたきをたたえながら。

        ポリツィアーノ『スタンツェ』第1巻第43,47,55連 原基晶(訳)
        2016年 勁草書房 『ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎』

 

槍試合の勝者へは、一番美しいとされている女性が女神ニケに扮し、月桂冠を授ける。
その女神の役に選ばれたのが、シモネッタ。一部ではプリマヴェラのフローラ女神のモデルと言われた女性だ。この際のシモネッタの姿を歌ったこの歌の表現が、プリマヴェラのフローラの姿と一致すると言う事が、その理由。
あくまでも論を二分する片方の主張ではあるけれど、映画中、ロレンツォ氏やナターリ氏の言ってる事が一致して、わかりやすくなる。こういった予備知識をもってイタリア古典、視覚芸術を鑑賞する奥深さが、中世からルネサンスにかかる「芸術」の面白さなのがよくわかる。
よい作品をいち早く観れた事に感謝いたします。

イタリアいきたい。。。。

 

特集 村上隆/美術手帖 2016年 1月号

 P64. 「メディチ家の政治と芸術」 文/原基晶

 

ボッティチェリ《プリマヴェラ》の謎: ルネサンスの芸術と知のコスモス、そしてタロット

 

 

uffizi4k3d.com

 

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4k映像によるバーミヤンの豊かな景色を望む

公開もあと1週間となった藝大のバーミヤン天井壁画復元公開。

あの4K映像がもう一度観たくて、都合よく時間がつくれたので覗きに行ったら、前田先生がお出でだった!

そしてにわかに解説が始まり、すでに観覧者もだいぶいたけど、どんどん増えて室内は熱気むんむん。

 

 緑豊かなバーミヤンの風景が4K映像で壁面一面のスクリーンに映し出される。
その風景をくまなくご説明くださる前田先生。

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現在のバーミヤンの平和で美しい4K映像を見ながら、地理を含め、玄奘さんの通った古道や中世イスラムの城塞に起こった史実など、この地に残る豊富なエピソードを交えてみっちり1時間に及びお話になられた。
さすがパワフル!

 

この会場で映し出されているバーミヤンの4K映像はすべて昨年から本年に渡って現地スタッフにより撮影された最新の姿。

荒れ果てた闘争の大地のイメージを払拭する平和で美しい土地と文化が復活しているのです。

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石窟群向かいにある丘陵地からの景色。
東大仏の頭頂部まっすぐ上空に北斗星が位置する。
その意味が成すところにより、東西大仏の建立期論争にも進展が与えられたそう。

 

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 東大仏の東側壁画

頭部むかって右側に、僧侶に先導されバルコニーへ降りてくる聖人(当時の寄進者である王侯貴族たち)の列が描かれている。 

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初夏が近づけば、山脈からの豊富な雪解け水が、また大地を緑に彩ります。

 

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平山郁夫氏が大仏の再建を反対した理由にはまだ多くの理由があるという。
バーミヤンの岩壁を切り出した大仏の石材はその土地の地質上、あまりにも脆い材質だった。破壊され残った断片をつなぎ合わせ再生するには莫大な費用がかかる。そのため、大仏再建の声が上がった時、コンクリートを使って新たに仏像を再建しようとしたのだそう。 

  

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左奥、山脈の手前にあるのがシャリ ゴルゴラ。「嘆きの丘」と言われる山城廃墟が残されている。
イスラムの城塞だったが、13世紀チンギスハンの侵攻と虐殺により壊滅。それがその名の由来。

 

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嘆きの丘の頂からの眺め。
手前北より、画面中央の南へ向かう緑の道筋が、玄奘さんが通って行った古道。ナガラハーラを経て、インドへ続く道。

 

 

 

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東大仏頭頂部バルコニー位置からの眺め。
左にあるなだらかな窪地は5月頃になると山脈の雪解け水が流れたまり、水嵩がますとまん丸の大きな池がひろがっていく。
そこで僧侶たちが沐浴をする、れっきとした仏教遺跡。

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火焔仏とゾロアスター信仰との関係についてご説明中。これも重要な要素の一つ。

 

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釈迦誕生譚の寄進についてのご説明される前田先生。

 

大仏の断片は現在も再建の時を待ち、大切に保存されているそう。現地の人々が望めば、いつかその再建の計画は動き出す。

今回の天井壁画複製によって、もろく扱いにくかった材質の研究も進み、コンクリートではない大仏の再建が望める。
破壊の無意味さを現代の智性の結集で指し示す時が来る。 

玄奘三蔵、シルクロードを行く (岩波新書) 前田 耕作 (著)

 

アフガニスタンを想う―往還半世紀― 前田 耕作 (著)

 

 2016年4月12日(火)― 6月19日(日)[ 入場無料 ]
東京藝術大学 大学美術館陳列館(東京都台東区上野公園12-8)
[ 開館時間] 9:30~17:00(入館は16:30まで)※月曜休館

バーミヤン天井壁画 東京藝術大学

www.bamiyan-hekiga.com

 

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