びぶりおてか

私家版 Caffè Biblioteca

9/13ルーヴル美術館展@東京都美術館にいってきた。

2013/7/20(土)~9/23(月・祝)
 
中国四千年の文明よりも、より進んだ文明があった。
ユーラシア大陸のより西に位置し、アフリカ大陸とにかこまれた内海を取り囲む。
地中海沿岸には、既に記号の域を脱した「文字」で「記録」をする文明が存在した。
古代中国紀元前2000年以上を遡れば、東アジアのものにとってはもはや、記録にも残らない神話の時代。
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彫像断片:ディアデマを冠したエジプトの地母神イシスの頭部 他
第一章地中海の始まり ー前2000年紀から前1000年紀までの交流ー
 
展覧会はルーヴル美術館が胸を張ってヨーロッパを代表し、
そのコレクションにより、ヨーロッパ文明の基盤と変遷をガイドしてくれる。
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きれいになってからの都美は初めてだな。ナイトミュージアム♪
 
序章「地中海世界ー自然と文化の枠組みー」から、
近代ヨーロッパ文化と地中海を概観する第五章「地中海紀行」までの
時代変遷ベース立て。 生活と文化史概観ね。
 
序章「地中海世界ー自然と文化の枠組みー」
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黒像式アンフォラと素焼きの双耳アンフォラ テラコッタ
オリーヴ油の壺。前700〜前300年
 
既にオリーヴ油が産業、交流と、生活の要となっている。
赤(オレンジ褐色)と黒のアンフォラは、精巧な縁取りの円形を作り出す。
この緻密さ。
この時点で古代の民の幾何学美意識は臨界点に達し、美を「描く」領域に入っている。
その頃日本ではせっせと人間離れした造形の土偶を作っておりました。

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一章 地中海の始まりー前2000年紀から前1000年紀までの交流ー
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破風付き墓碑(大理石)前400-前300年
墓碑に男性名が標されているという(読めない)。
 
ここで諸手を挙げて感涙しそうな感情を押しとどめる。
S字、C字を巧みに組み合わせたパルメット文様だ。美しい。
後にインドの仏教荘厳は、このパルメット文様と古代インド思想の蓮華化生を融合させる。
精巧な幾何学紋様の美意識が発展して、より優美な植物文様のパルメットを生み出したんだろうな。
生活を支え彩る工芸品がバリエーションを増やし、メンタルの豊かさは驚きとともに制作年代を何度も確認させる。
人の美への追究心は猛スピードで進んでいくんだ。
 
 二章 統合された地中海ーギリシア・カルタゴ・ローマー
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美意識の高騰と伴に淘汰もすすむ。
 前146年にローマに破壊された消えたカルタゴの遺物とローマ帝国の統一。
 
既に確立されている大理石彫像の美しさといったら。
日本で運慶が木彫像の頂点を極めるのはその千年以上後だ。。。。
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彫像頭部:エジプト王女ベレニケの肖像(大理石) 前300-前250年
 
でかい。
王女の「頭部」ということは、この下はどのくらいあるのだろうか。
ちょっとこわい。
 
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2-3 ローマ人の地中海
手前から、皇帝アウグストゥスハドリアヌス、セプティミウス
前27〜204年以降
 
歌い出しそうな胸像。
これはこの時代、胸像図像みたいな物があったのかな(笑)
向きは皇帝座位から右に信仰物があるため、全部右斜向きとか。
 
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床モザイク(大理石、石灰岩
葉冠に鴨と男性胸像 175-225年
 
 
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ローマ皇帝ルキウス・ウェルスの妻ルキッラの巨大な頭部
大理石 150-200
 
高さ160㎝の仏頭ならぬ。。。
友だちに薦められていたのだが、もっと怪獣形の造形かと思っていた。
美しいだけ、怖さも嫌増す。
 
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いったい、これを作らせた主(おそらく皇帝本人)の目的は何だったのだろうか。
戒めか。
もう少し、用途のヒントを得られないかと一生懸命背面を覗いたのだが、
耳から後ろは荒削りのまま。
これが、行基出現仏のように宮殿の柱などから浮き出す様に彫り出されていたとしたら・・・。皇帝の短命さの一因がここにあるような気がする。
 
全体的にキャプションが簡素過ぎるのが残念。
 
その後展示室は更に時代を追う。
三章 中世の地中海ー十字軍からレコンキスタへー
四章 地中海の近代ールネサンスから啓蒙主義への時代へ
五章 地中海紀行
 
美しきダイアナ、「ギャビーのディアナ」は最後の章
五章 地中海紀行(1750-1850年
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アルテミス 通称「ギャビーのディアナ」
大理石 100年頃 
 
群がる群がる。隣の王子パリスが覆いも無くて気の毒なくらい。
イタリアでアルテミスというと、私の中では中世のアルテミス信仰、多乳房の彫像のシュールな噴水(byティボリ)だが、時代が違うとこんなにも女神が変わるのか。
ティボリといえば、隣にいた「トロイアの王子パリス」君はティボリ発掘だそうで。
この寒々しい裸像は、中世の日本で流行った裸像信仰と似た習俗なんでしょうか。
そんなわけないか。。。
 
彫像の次室には近代風景画。
たった130年前のコロッセオサン・ピエトロ大聖堂の眺めってこんなだったのか。
近代化の波ってデリカシーに欠くな。
パワーセーブせず古代を抜けてしまうと、中世で途端に燃料切れ。
すんません。
 
「1767年10月ヴェスヴィオ火山の噴火」(1729-99)フランス 油彩
ただ、これを見てなけなしのエネルギーが燃焼。
プリニウスが命を賭した79年のヴェスヴィオ火山の噴火は、ネロが再興した都市ポンペイを飲み込みむ。
そう、ここで私の意識は二章室に戻ってしまう。
 
人の叡智を遡ると、星を超えて、宇宙の発生、陰陽の世界観へたどり着く。
特定の時代に停滞していた脳は再び水甁のように、生命感を帯びた唐草を次々に発生させ尽く広がり、新しい宇宙を生み出していく。
爽快だった。
 
 

ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―

The Mediterranean World: The Collections from the Louvre

2013/7/20(土)~9/23(月・祝)

東京都美術館 企画展示室

 

※全ての画像は特別公開により、主催者の許可を得て展示風景の撮影を行ったものです。