『神曲』講座/最終回 第28歌 第九巣窟/分裂先導者
月1ではあったけど、一年以上になった原先生の『神曲』講座も一旦終了。原先生は10年以上に及んだ訳業の総括ともなる論文執筆に入られる。
原先生はご実家の家が京都市内にあり、神曲新訳版執筆中の殆どを京都で過ごされている。京都の地がそういったアカデミックな活動に群を抜いて適した環境であることがよくわかる。
まずは、その集大成が世に送り出されるのを楽しみに待ちたい。
最後の講義は「地獄篇」第28歌。
26歌、27歌と3詩篇で、一つの集合体を引き裂いた罪が問われる。
特に28歌は現代の私たちも、ダンテが何を憂い、罪を洗い出し、世界を変えていこうとしていたのかを、改めて読み解く必要のある詩篇。そこには彼ムハンマドが世界を割いた咎により、体を引き割かれた姿を曝す。その凄まじい描写は日本語訳を通しても重く、人類がその意思をもって踏み外してしまった過ちが如何なる結果をもたらすのかを、目を背けたくなる様な姿で否応なく目の前に表す。
このムハンマドがダンテによって裁かれる28歌は、現代のイスラム圏でも未だ削除されているという。西アジアとヨーロッパの、政治と宗教の距離感がとてもよくわかる。
時代背景と当時の歴史観を踏まえれば、ダンテがムハンマドをこの圏に置いた理由も致し方がない。だが、ダンテのこの大きな誤りが、その後決定的にイスラムとキリスト教世界を分かつ一因となる。
この功罪を、先人の最高の叡智として、現代の私たちは真理を認識するべき時代になっているのだと思う。
なお、先生は様々な理由からも本年度の提出という着地を課していらっしゃるので、論文が日を浴びるのも近く明らか。大丈夫♪
またそのうち。を期待しております。(勉強しております)
神曲 地獄篇 (講談社学術文庫) ダンテ・アリギエリ (著), 原 基晶 (翻訳)